いつの間にか空には月が輝いていた。まだこの特別な1日を終わらせたくない。
少し遠回りをして、もう少しこの静かな夜をふたりで楽しもうか。
グラスを傾けながら想う。もう一度、君にプロポーズしよう。
滞在シーンStay Scenes
Anniversary Stay
出発前から旅は始まっている、今回の旅の目的は結婚記念日。
普段なら照れくさくてできないことも、コンシェルジュに相談を重ね、計画は万全。
ふたりで歩き出した大切な記念日を祝うたび、思い出がさらに増えていく。
日に焼けたドアマンの笑顔に迎えられ、海を見渡すテラスでチェックイン。
ルームキーのタグに刻まれた「Happy Anniversary」の文字に、思わず笑顔になる。
妻には内緒にしておこう、気づいた時の驚く顔を楽しみに…。
荷ほどきもそこそこに、部屋から見えたプールへと急ぐ。プールの青、海の青、見上げれば太陽が降り注ぐ空も青一色。この身も風景に溶け込むように、水しぶきを上げてプールへ吸い込まれていく。
今回の旅のアトラクションには、クルーズを取り入れてみた。真っ白なヨットで青い海に漕ぎ出し、潮風を身体いっぱいに受け止める。その風に日常の憂さが吹き流されるようだ。
夏の日差しを浴びて火照った身体を癒しに、妻は予約していたエステルームへと向かう。この間に私はコンシェルジュデスクへ出向き、ディナーの最終打ち合わせ。「サプライズな企画を頼めないか?」
そうだ、さっき彼女がのぞいていたショップのスカーフはどうだろう?
「沖縄の海の色や花の色を写し取った柔らかなスカーフは、記念のプレゼントにも打ってつけですよ」と、コンシェルジュも太鼓判を押してくれた。
海とプールが金色に染まり、プールサイドからサックスの音色が流れるころ、ふたりはディナーのための身支度を整える。リゾートにも、リゾートにふさわしいディナーのための装いがあると思うの。そんな風に言って、彼女はお気に入りのドレスに袖を通す。
特別な日は、特別なステージでデイナーをー。締めくくりには、アニバーサリーケーキとサプライズプレゼントがテーブルに届けられる。「ご結婚記念日、おめでとうございます」。さりげなく、そして心のこもったウエーターの言葉に、少し照れた僕と満面の笑みを浮かべる君がいた。